
年末調整で一番しんどいのは、計算より「誰から何が届いていないか」を追いかけることです。ここはExcelで管理すると、ぐっとラクになります。
結論:回収管理は「入力規則+COUNTIF+条件付き書式」だけで作れる
年末調整の書類の回収管理は、特別な関数もマクロも要りません。使うのは次の3つだけです。
- データの入力規則:「済・未・不要」をリストから選べるようにする
- COUNTIF関数:未提出の書類が残っているかを自動で判定する
- 条件付き書式:期限を過ぎた未提出の行を赤くする
慣れていれば10分で作れます。社員数が数十人〜100人くらいまでなら、専用のシステムがなくても十分に回ります。
📌 この記事でわかること
- 回収管理表に入れる列(何を管理するか)
- ドロップダウンの作り方と、未提出を判定する数式
- 期限を過ぎた人を自動で赤くする方法
- 表を作るときの、個人情報の扱いの注意
なぜ、回収管理でつまずくのか
年末調整の書類は、1人あたり複数の種類があります。扶養控除等申告書、基礎控除申告書(配偶者控除等申告書と一体の様式)、保険料控除申告書、そして保険の控除証明書などの添付書類です。人数が増えると、「誰の何が未提出か」が頭の中だけでは管理できなくなります。
とくに2026年分は、基礎控除や扶養の所得要件が変わる年です(詳しくは【2026年分】年末調整はいつ・何を書く?にまとめています)。書類の様式が新しくなるので、書き方の問い合わせや差し戻しが例年より増える可能性があります。回収状況を一覧で見られる表があると、対応の抜け漏れを防げます。
完成イメージ:この列を作る
まず、表の列を決めます。多くしすぎると入力が面倒になるので、必要なものだけに絞ります。
| 列 | 見出し | 入力する内容 |
|---|---|---|
| A | 社員番号 | 会社の社員番号 |
| B | 氏名 | 氏名(フルネーム) |
| C | 部署 | 部署名(催促の連絡先を絞るため) |
| D | 扶養控除等申告書 | 済/未/不要 のどれか |
| E | 基礎控除申告書など | 済/未/不要 のどれか |
| F | 保険料控除申告書 | 済/未/不要 のどれか |
| G | 添付書類(控除証明書など) | 済/未/不要 のどれか |
| H | 前職の源泉徴収票 | 済/未/不要(年の途中で入社した人だけ「未」を使う) |
| I | 状況 | 数式で自動表示(完了/未提出あり) |
| J | 最終連絡日 | 催促した日 |
| K | メモ | 不備の内容など |
表の外(たとえば右上のL1セル)に、提出期限の日付を入力するセルを1つ作っておきます。この日付を、あとで条件付き書式で使います。
手順1:ドロップダウンで「済・未・不要」を選べるようにする
D〜H列をドラッグで選択して、リストを設定します。
- D2からH列の最後の行までを選択する
- 「データ」タブ → 「データの入力規則」をクリックする
- 「入力値の種類」で「リスト」を選ぶ
- 「元の値」に
済,未,不要と入力する(カンマは半角) - 「OK」を押す
これで、セルをクリックするとドロップダウンが出て、3つの中から選べます。表記ゆれ(「済」「済み」「○」が混ざる)を防げるのが一番の利点です。数式での判定も、表記が揃っていないと正しく動きません。

入力する人が自分だけでなくても、選択式にしておくと入力がブレません。後から数えるときに効いてきます。
手順2:「状況」を数式で自動表示する
I2セルに、次の数式を入力します。
=IF(COUNTIF(D2:H2,"未")>0,"未提出あり","完了")
意味は「D2〜H2の中に「未」が1つでもあれば「未提出あり」、なければ「完了」と表示する」です。入力したら、I2セルの右下をダブルクリックして、下の行までコピーします。
ポイントは、未提出のときに「未」を入れるというルールにすることです。空欄のままにすると、「まだ確認していない」のか「提出が不要」なのか区別がつきません。最初に全員を「未」で入れておき、書類を受け取るたびに「済」に変えていく運用が、いちばん確実です。
手順3:未提出の人数と提出率を出す
表の上か横に、全体の状況がひと目でわかる集計を置きます。
| 項目 | 数式(例:データが2〜101行の場合) |
|---|---|
| 対象の人数 | =COUNTA(A2:A101) |
| 完了した人数 | =COUNTIF(I2:I101,"完了") |
| 未提出の人数 | =COUNTIF(I2:I101,"未提出あり") |
| 提出率 | =完了した人数のセル/対象の人数のセル(セルの書式を「パーセンテージ」にする) |
提出率が見えると、上司への進捗報告も数字で簡単にできます。「今日時点で82%、残り12人です」と言えるだけで、話が早くなります。
手順4:期限を過ぎた未提出の行を赤くする
条件付き書式で、期限を過ぎてもまだ未提出の人の行を、自動で赤く塗ります。
- A2からK列の最後の行までを選択する
- 「ホーム」タブ → 「条件付き書式」 → 「新しいルール」をクリックする
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式の欄に
=AND($I2="未提出あり",TODAY()>$L$1)と入力する - 「書式」ボタンで、塗りつぶしを薄い赤にして「OK」を押す
数式の中の $(ドル記号)が大事です。$I2 は「I列に固定して、行だけ動かす」、$L$1 は「必ずL1セルを見る」という意味です。ここを間違えると、行ごとに判定がずれます。
TODAY関数は、ファイルを開いた日の日付を返します。毎日開くだけで、期限を過ぎた人が自動で赤くなります。
手順5:催促する人だけを一覧にする
赤くなった人に連絡するときは、フィルターを使います。
- 見出しの行を選択して、「データ」タブ → 「フィルター」をクリックする
- I列の▼をクリックして、「未提出あり」だけにチェックを入れる
- C列(部署)で並べ替えると、部署ごとにまとめて連絡できる
催促のメールは、「どの書類が未提出か」を具体的に書くと、返事が早くなります。D〜H列で「未」になっている列の名前を、そのまま文面にコピーしてください。
作るときの注意:個人情報を入れすぎない
⚠️ 管理表に書いてはいけないもの
年末調整の書類には、マイナンバーや家族の氏名・生年月日など、とても重い個人情報が載っています。回収管理表は「提出の有無」だけを管理するもので、書類の中身を転記しないのが原則です。ファイルにはパスワードをかけ、保存場所とアクセスできる人も絞ってください。
社内に個人情報の取り扱いのルールがある場合は、それに従ってください。この表は、あくまで「回収の進み具合を見るための道具」です。
2026年分だからこそ、足しておくと便利な列
- 様式の確認列:基礎控除申告書などは、今年配られた様式で書かれているかを確認する列です。去年の様式のまま出されたものがないか、受け取るときに見ます。
- 問い合わせ列:「基礎控除はいくらになるの?」などの質問が来た日と内容を、K列のメモに残しておくと、同じ質問への回答がまとめられます。
よくある質問
Q:COUNTIFで「未」を数えても、0のままです。
A:「未」が全角と半角で混ざっている、または前後にスペースが入っている可能性があります。ドロップダウンで選ぶ形にしておけば、表記は揃います。
Q:社員が200人を超えても、この方法で足りますか?
A:表自体は問題なく動きます。ただし、人数が多い会社は年末調整のシステムを使っているケースがほとんどなので、その場合はシステム側の機能を使うほうが確実です。
Q:TODAY関数が毎日変わるので、過去の状態を残せません。
A:提出率などの途中経過は、日付を付けて別のシートに値だけ貼り付けておくと、記録として残せます。
まとめ
- 年末調整の回収管理は、入力規則+COUNTIF+条件付き書式の3つで作れる
- 「未」を最初に入れ、受け取ったら「済」に変える運用にする
- 期限を過ぎた未提出は、赤くなる仕組みにしておくと見落とさない
- 書類の中身は転記せず、提出の有無だけを管理する
COUNTIFのような集計関数をもっと使いこなしたい方は、SUMIF関数で条件付き集計を時短マスターもどうぞ。年末調整の制度そのものについては、【2026年分】年末調整はいつ・何を書く?で解説しています。
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経理や事務の仕事では、こうした管理表を自分で作れるかどうかで、毎日の作業の速さが変わります。独学と教室のどちらが向いているかは、Excelは独学とパソコン教室どっちがいい?で整理しています。
※操作画面はMicrosoft Excel(Windows版・Microsoft 365)を基準にしています。バージョンによって、メニューの名前が少し異なる場合があります。

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