「経理の仕事は、AIでなくなるらしい」
そんな話を聞いて、不安になったことはありませんか。
私は経理の仕事を17年続けています。正直に言うと、私も一度は「人はいらなくなるかもしれない」と思いました。勘定科目の入力は、会計ソフトによってはもう自動で進むようになっているからです。
でも、実際に毎日AIを使って仕事をしてみて、考えが変わりました。この記事では、私が実際にAIに任せている仕事、任せられなかった仕事、AIが間違えた例を、そのまま書きます。一般論ではなく、経理の現場で使ってみた話です。

結論から言うと、なくなるのは「作業」で、なくならないのは「確認して指示する人」です。理由を順番に見ていきましょう。
「経理の仕事がなくなる」と聞いて、最初に思ったこと
勘定科目の入力は、会計ソフトの自動仕訳がどんどん賢くなっています。銀行明細やクレジットカードの明細を取り込めば、ある程度は勝手に科目がついてきます。
それを見たとき、私は「この調子だと、人はいらなくなるかもしれない」と思いました。実際、入力だけを担当している人の仕事は、減っていくと思います。
ただ、使い続けるうちに気づいたことがあります。自動で出てきた結果が正しいかどうかは、誰かが確認しないといけないということです。そして、その確認ができるのは、仕訳の意味が分かっている人だけです。
データで見る:「経理はなくなる」と言われる理由
「経理の仕事はなくなる」という話には、もとになった調査があります。2015年に野村総合研究所とオックスフォード大学が共同で発表した研究で、日本の労働人口の約49%が、10〜20年後にはAIやロボットで技術的に置きかえられる可能性があるという結果が出ました。このとき、置きかえられる可能性が高い職業のひとつとして「経理事務員」が挙げられたのです。
ただし、これは「技術的にはできる」という試算です。研究した側も「49%の仕事が本当になくなるわけではない」と説明しています。また、総務省の情報通信白書(平成30年版)では、職業を丸ごとではなく「作業(タスク)」ごとに見ると、ほとんどの作業が自動化される職業は約9%にとどまる、という別の研究も紹介されています。
| 見方 | 結果 |
|---|---|
| 職業ごとに見る(野村総研×オックスフォード) | 労働人口の約49%が置きかえ可能。経理事務員も「可能性が高い」側 |
| 作業ごとに見る(総務省白書で紹介) | ほとんどの作業が自動化される職業は約9% |
つまり、経理という仕事が丸ごと消えるのではなく、経理の中の「作業」が減っていくと考えるのが実態に近いと思います。これは、私が現場で感じていることとも一致します。
出典:総務省「平成30年版 情報通信白書」職業の変化/野村総合研究所 ニュースリリース(2015年12月2日)
実際にAIに任せている仕事(経理17年の現場から)
私が今、実際にAIに手伝ってもらっている仕事です。
| 任せている仕事 | どう使っているか |
|---|---|
| 勘定科目の相談 | 迷う取引を説明して「どの科目が考えられるか」を挙げてもらう。判断するのは自分 |
| 取引先から届く明細の保存 | 毎月届く明細を、決まった名前・決まった場所に自動で保存する |
| 請求書との違算チェック | こちらが発行した請求書と、先方の明細を突き合わせて、金額が合わない行を出してもらう |
| 出荷もれのチェック | 受注のデータと出荷のデータを比べて、抜けている分を拾い出す |
| タイムカードの集計 | 時間の集計や、形式のバラバラなデータを整える作業 |
並べてみると、共通点があります。どれも「大量のデータを突き合わせて、違うところを探す」仕事です。人がやると時間がかかるうえに、見落としも起きます。ここはAIがとても得意な部分でした。
突き合わせ、抜けもれ探し、差額探し、形式のバラバラなデータを整える。この4つは、任せると一番ラクになります。
それでもAIに任せきれない理由:思い込みで進むことがある
一番伝えたいのはここです。
AIは、思い込みのまま進んでしまうことがあります。こちらが説明していない部分を勝手に決めつけて、そのまま計算や仕分けを続けてしまうのです。しかも、自信のある書き方で答えてきます。
だから、最終確認は必ず人がやる必要があります。逆に言うと、間違っている箇所を「ここが違う」と伝えれば、AIはきちんと直してくれます。つまり、
- 間違いに気づける人が使えば、AIはとても強い道具になる
- 気づけない人が使うと、間違ったまま先に進んでしまう
同じAIでも、使う人によって結果がまったく変わります。

AIは「分からない」とは言わずに、それらしい答えを出してきます。だからこそ、簿記が分かる人ほど安全に使えるんです。
AIに任せられないもうひとつの仕事:「ルールが変わったとき」の対応
経理の仕事は、税金や法律のルールが変わるたびに、やり方を変えなければいけません。ここ数年だけでも、大きな変更が続きました。
| 時期 | 変わったこと | 経理でやることになったこと(例) |
|---|---|---|
| 2019年10月 | 消費税10%・軽減税率の導入 | 8%と10%の取引を分けて処理する |
| 2023年10月 | インボイス制度の開始 | 受け取った請求書に登録番号があるかを確認する |
| 2024年1月 | 電子帳簿保存法(電子取引データの保存義務化) | メールなどで受け取った請求書を、電子データのまま保存する |
私も、2019年の消費税10%・軽減税率の導入のときに経理として対応しました。正直に言うと、かなり大変でした。いちばん苦労したのは飲食店のレジの設定です。
軽減税率では、同じ料理でも店内で食べれば10%、持ち帰りなら8%と、食べる場所によって税率が変わります。レジでどちらの税率で打つのか、レシートや売上の集計でどう分けるのか。ルールを読んだうえで、お店の実際の売り方に合わせて設定を決めていく必要がありました。
こういうときに必要なのは、「新しいルールを読んで、自分の会社では何をどう変えるかを決める」ことです。AIはルールの説明はしてくれますが、自分の会社の取引や取引先の事情までは知りません。どの取引が対象になるのかを見きわめ、社内の誰に何をお願いするかを決めて動くのは、人の仕事です。
税率や制度が変わるたびに、「うちの会社ではどうするか」を判断する人が必要になります。これも、経理の仕事がなくならない理由のひとつだと考えています。
結論:なくなるのは「入力」、残るのは「確認して指示する人」
ここまでをまとめると、経理の仕事は次のように分かれていくと思います。
| 減っていく仕事 | 残る仕事 |
|---|---|
| 決まった形の入力・転記 | 出てきた結果が正しいかの確認 |
| 紙を見ながらの手集計 | イレギュラーな取引の判断 |
| 単純な突き合わせ | AIに何をさせるかを決めて、指示すること |
| 形式を整えるだけの作業 | 数字の背景を人に説明すること |
確認ができて、AIに指示ができる人。これから残っていくのは、この人だと思います。
これは、転職の場面でも同じでした。私が42歳で経理として転職したとき、聞かれたのは入力の速さではありません。「どこまで自分で判断していたか」でした。AIが入っても、見られるところは変わらないということです。
AI時代の経理に必要なスキル3つ
「確認して指示する人」になるために、身につけておきたいのは次の3つです。
| スキル | なぜ必要か |
|---|---|
| ① 簿記の知識 | AIや自動仕訳の答えが正しいかを判断する「ものさし」になる |
| ② Excelでデータを扱う力 | AIに渡すデータを整えたり、出てきた結果を突き合わせて確かめたりするのに使う |
| ③ 数字を説明する力 | 「なぜこの数字になったか」を上司や社長に説明するのは、最後まで人の仕事 |
特に②のExcelは、AIと組み合わせると効果が大きい部分です。たとえば、取引先ごとのデータを突き合わせるならXLOOKUP関数を知っているだけで、AIに頼む前に自分で確かめられます。Excelのスキルを転職で伝える方法はExcelスキルを資格で証明して転職につなげる方法にまとめています。

どれも「AIの答えを鵜呑みにしないため」のスキルです。経理の経験がある人は、もう半分持っているようなものですよ。
会社でAIが使えない人はどうすればいいか
私の職場ではAIを使えていますが、「会社では禁止されている」という方も多いと思います。その場合でも、練習する方法はあります。
- 自分の家計簿や、副業の帳簿で練習する:会社の情報は一切使わずに済みます
- 仕組みだけを相談する:実際の数字や取引先名を入れず、「こういう場合はどの科目か」と一般的な形で聞く
- Excelの数式を作ってもらう:データを渡さなくても、数式や手順だけ教えてもらえます
取引先名、個人情報、金額の入ったファイルなどを無断でAIに入れるのは、情報漏えいにつながります。必ず社内のルールを確認してから使ってください。ルールが無い場合は、上司や情報システムの担当者に相談するのが安全です。
何から始めればいいか(3つの段階)
「使えるようになりたい」と思ったとき、いきなりお金をかける必要はありません。順番があります。
① まず無料で試す
ChatGPTやClaudeは、無料でも十分に試せます。最初の練習におすすめなのは、次の3つです。
- 迷った勘定科目を、一般的な形で相談してみる
- 作りたいExcelの集計を言葉で説明して、数式を出してもらう
- 2つの表を貼り付けて、「金額が合わない行を出して」と頼む
② 次に本で全体像をつかむ
無料で触ってみて「もっとうまく使いたい」と思ったら、本が一番安い方法です。使い方の型が分かると、指示の出し方が変わります。
③ それでも足りなければ講座
本や独学だと続かない、体系的に学びたい、という場合に初めて講座を考えます。無料のセミナーや説明会があるところも多いので、まずはそこで話を聞くだけでも十分です。
いきなり高い講座に申し込む必要はありません。①で3回くらい触ってみて、それでも「体系的に学びたい」と思ったときに③を考える。この順番なら、お金の無駄になりません。
よくある質問
Q:経理の仕事は何年後になくなりますか?
A:「何年後に経理がゼロになる」という根拠のある予測はありません。よく引用される野村総研の研究も「10〜20年後に技術的に置きかえ可能」という試算で、実際になくなるかは別の話です。入力などの作業は年々減っていますが、確認や判断の仕事は残ると考えています。
Q:経理はもうオワコンですか?将来性はありますか?
A:入力だけの仕事は減りますが、確認・判断・説明ができる経理は、むしろAIを使いこなす側として必要とされると思います。私自身、42歳で経理として転職したとき、見られたのは「どこまで自分で判断していたか」でした。
Q:会計事務所の仕事や税理士の仕事もなくなりますか?
A:記帳代行のような入力作業は、同じように減っていくと考えられます。一方で、お客さんへの説明や判断が必要な相談の仕事は残ります。会社の経理と同じく、「作業」と「判断」で分けて考えるとわかりやすいです。
Q:簿記が分からなくてもAIを使えば経理はできますか?
A:おすすめしません。AIの答えが正しいかどうかを判断できないからです。むしろ「簿記が分かる人ほど、AIを安全に使える」というのが実感です。
Q:AIが間違えたら、どうすればいいですか?
A:間違っている箇所を具体的に伝えれば直してくれます。「ここは○○という理由で違う」と根拠を添えると、その後の精度が上がります。
Q:40代からでも、AIを覚えられますか?
A:覚えられます。むしろ経理の経験がある40代のほうが、AIの答えの間違いに気づけるぶん有利です。操作より「何をさせたいか」を考えることのほうが大事です。
Q:会社の会計ソフトが自動仕訳に対応したら、人は不要になりませんか?
A:入力の担当は減ると思います。ただ、自動で出た仕訳が正しいかの確認と、イレギュラーの判断は残ります。そこを担当できるかどうかが分かれ目です。
まとめ
- 入力や突き合わせなど、決まった形の作業はAIに置きかわっていく
- 一方でAIは思い込みのまま進むことがあり、最終確認は人が必要
- 間違いを伝えれば直してくれる。気づける人が使えば強い道具になる
- 残るのは「確認できて、AIに指示できる人」
- 始めるなら無料で試す → 本 → 講座の順で
「経理の仕事がなくなる」と聞くと不安になりますが、実際に使ってみると、なくなるのは作業のほうでした。確認して指示する側に回れれば、経理の経験はこれからも武器になります。

まずは今週、迷った勘定科目を1つ相談してみるところから。それだけで、AIとの距離はぐっと縮まりますよ。
🤖 「体系的に学びたい」と思ったときの選択肢
まずは無料のChatGPTやClaudeを触ってみて、それでも「仕事での使い方をきちんと身につけたい」と感じたら、講座という方法もあります。DMM 生成AI CAMPは、ChatGPTなどの生成AIを仕事に活かすことを目的にしたオンライン講座です。いきなり申し込む必要はなく、無料のセミナーで話を聞くだけでも大丈夫です。
※無料セミナーの参加は費用がかかりません。受講するかどうかは、話を聞いてから決めて大丈夫です。
不安なままにしないために、自分の市場価値を確かめる
AIで経理の仕事がなくなるかどうかは、正直なところ誰にもわかりません。ただ、ひとつ言えるのは、自分の経験が今どのくらい評価されるのかを知らないままだと、不安だけが大きくなっていくということです。
私は42歳で経理として転職しました。今の会社に残るつもりでも、市場価値を一度確かめておくと「この経験は通用する」「ここは足しておこう」という判断ができます。転職するかどうかは、話を聞いてから決めて大丈夫です。
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