「経理の仕事は、AIでなくなるらしい」
そんな話を聞いて、不安になったことはありませんか。
私は経理の仕事を17年続けています。正直に言うと、私も一度は「人はいらなくなるかもしれない」と思いました。勘定科目の入力は、会計ソフトによってはもう自動で進むようになっているからです。
でも、実際に毎日AIを使って仕事をしてみて、考えが変わりました。この記事では、私が実際にAIに任せている仕事、任せられなかった仕事、AIが間違えた例を、そのまま書きます。一般論ではなく、経理の現場で使ってみた話です。

結論から言うと、なくなるのは「作業」で、なくならないのは「確認して指示する人」です。理由を順番に見ていきましょう。
「経理の仕事がなくなる」と聞いて、最初に思ったこと
勘定科目の入力は、会計ソフトの自動仕訳がどんどん賢くなっています。銀行明細やクレジットカードの明細を取り込めば、ある程度は勝手に科目がついてきます。
それを見たとき、私は「この調子だと、人はいらなくなるかもしれない」と思いました。実際、入力だけを担当している人の仕事は、減っていくと思います。
ただ、使い続けるうちに気づいたことがあります。自動で出てきた結果が正しいかどうかは、誰かが確認しないといけないということです。そして、その確認ができるのは、仕訳の意味が分かっている人だけです。
実際にAIに任せている仕事(経理17年の現場から)
私が今、実際にAIに手伝ってもらっている仕事です。
| 任せている仕事 | どう使っているか |
|---|---|
| 勘定科目の相談 | 迷う取引を説明して「どの科目が考えられるか」を挙げてもらう。判断するのは自分 |
| 取引先から届く明細の保存 | 毎月届く明細を、決まった名前・決まった場所に自動で保存する |
| 請求書との違算チェック | こちらが発行した請求書と、先方の明細を突き合わせて、金額が合わない行を出してもらう |
| 出荷もれのチェック | 受注のデータと出荷のデータを比べて、抜けている分を拾い出す |
| タイムカードの集計 | 時間の集計や、形式のバラバラなデータを整える作業 |
並べてみると、共通点があります。どれも「大量のデータを突き合わせて、違うところを探す」仕事です。人がやると時間がかかるうえに、見落としも起きます。ここはAIがとても得意な部分でした。
突き合わせ、抜けもれ探し、差額探し、形式のバラバラなデータを整える。この4つは、任せると一番ラクになります。
それでもAIに任せきれない理由:思い込みで進むことがある
一番伝えたいのはここです。
AIは、思い込みのまま進んでしまうことがあります。こちらが説明していない部分を勝手に決めつけて、そのまま計算や仕分けを続けてしまうのです。しかも、自信のある書き方で答えてきます。
だから、最終確認は必ず人がやる必要があります。逆に言うと、間違っている箇所を「ここが違う」と伝えれば、AIはきちんと直してくれます。つまり、
- 間違いに気づける人が使えば、AIはとても強い道具になる
- 気づけない人が使うと、間違ったまま先に進んでしまう
同じAIでも、使う人によって結果がまったく変わります。

AIは「分からない」とは言わずに、それらしい答えを出してきます。だからこそ、簿記が分かる人ほど安全に使えるんです。
結論:なくなるのは「入力」、残るのは「確認して指示する人」
ここまでをまとめると、経理の仕事は次のように分かれていくと思います。
| 減っていく仕事 | 残る仕事 |
|---|---|
| 決まった形の入力・転記 | 出てきた結果が正しいかの確認 |
| 紙を見ながらの手集計 | イレギュラーな取引の判断 |
| 単純な突き合わせ | AIに何をさせるかを決めて、指示すること |
| 形式を整えるだけの作業 | 数字の背景を人に説明すること |
確認ができて、AIに指示ができる人。これから残っていくのは、この人だと思います。
これは、転職の場面でも同じでした。私が42歳で経理として転職したとき、聞かれたのは入力の速さではありません。「どこまで自分で判断していたか」でした。AIが入っても、見られるところは変わらないということです。
会社でAIが使えない人はどうすればいいか
私の職場ではAIを使えていますが、「会社では禁止されている」という方も多いと思います。その場合でも、練習する方法はあります。
- 自分の家計簿や、副業の帳簿で練習する:会社の情報は一切使わずに済みます
- 仕組みだけを相談する:実際の数字や取引先名を入れず、「こういう場合はどの科目か」と一般的な形で聞く
- Excelの数式を作ってもらう:データを渡さなくても、数式や手順だけ教えてもらえます
取引先名、個人情報、金額の入ったファイルなどを無断でAIに入れるのは、情報漏えいにつながります。必ず社内のルールを確認してから使ってください。ルールが無い場合は、上司や情報システムの担当者に相談するのが安全です。
何から始めればいいか(3つの段階)
「使えるようになりたい」と思ったとき、いきなりお金をかける必要はありません。順番があります。
① まず無料で試す
ChatGPTやClaudeは、無料でも十分に試せます。最初の練習におすすめなのは、次の3つです。
- 迷った勘定科目を、一般的な形で相談してみる
- 作りたいExcelの集計を言葉で説明して、数式を出してもらう
- 2つの表を貼り付けて、「金額が合わない行を出して」と頼む
② 次に本で全体像をつかむ
無料で触ってみて「もっとうまく使いたい」と思ったら、本が一番安い方法です。使い方の型が分かると、指示の出し方が変わります。
③ それでも足りなければ講座
本や独学だと続かない、体系的に学びたい、という場合に初めて講座を考えます。無料のセミナーや説明会があるところも多いので、まずはそこで話を聞くだけでも十分です。
いきなり高い講座に申し込む必要はありません。①で3回くらい触ってみて、それでも「体系的に学びたい」と思ったときに③を考える。この順番なら、お金の無駄になりません。
よくある質問
Q:簿記が分からなくてもAIを使えば経理はできますか?
A:おすすめしません。AIの答えが正しいかどうかを判断できないからです。むしろ「簿記が分かる人ほど、AIを安全に使える」というのが実感です。
Q:AIが間違えたら、どうすればいいですか?
A:間違っている箇所を具体的に伝えれば直してくれます。「ここは○○という理由で違う」と根拠を添えると、その後の精度が上がります。
Q:40代からでも、AIを覚えられますか?
A:覚えられます。むしろ経理の経験がある40代のほうが、AIの答えの間違いに気づけるぶん有利です。操作より「何をさせたいか」を考えることのほうが大事です。
Q:会社の会計ソフトが自動仕訳に対応したら、人は不要になりませんか?
A:入力の担当は減ると思います。ただ、自動で出た仕訳が正しいかの確認と、イレギュラーの判断は残ります。そこを担当できるかどうかが分かれ目です。
まとめ
- 入力や突き合わせなど、決まった形の作業はAIに置きかわっていく
- 一方でAIは思い込みのまま進むことがあり、最終確認は人が必要
- 間違いを伝えれば直してくれる。気づける人が使えば強い道具になる
- 残るのは「確認できて、AIに指示できる人」
- 始めるなら無料で試す → 本 → 講座の順で
「経理の仕事がなくなる」と聞くと不安になりますが、実際に使ってみると、なくなるのは作業のほうでした。確認して指示する側に回れれば、経理の経験はこれからも武器になります。

まずは今週、迷った勘定科目を1つ相談してみるところから。それだけで、AIとの距離はぐっと縮まりますよ。

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